或る日、行きつけのホームセンターをぶらついていると、片隅に金属板のコーナーがあり、
その中に分厚いアルミ板を見つけた。
「これ丸く切って棒で繋げりゃ”リール”になるじゃない!!・・。」「大概の工具(電動工具)は家(店)にあるし。」
(アルミ材+電動工具)×のうじがいい=リール自作)という、短絡的方程式?がすぐに成り立ち、
今思えば、かなり割高のアルミ材と薄めの真鍮板を、躊躇せず購入。
帰りの車中、頭の中は傍らのアルミ材と夢想する”ぼやけたリール”が交錯し、
「作るぞー!。」という気持ちだけが先走っていた。

それからの約三ヵ月、当時、店の二階に寝泊りしていた私は、週に一度の休日と、
あとは仕事を終えた夜間を利用して、、誰にはばかることなく、完成を夢見て作業に没頭した。

知らないということは恐ろしいことで、当時、”旋盤”という工作の基本機械の存在を知らなかった私は、
手持ちの電動工具(ハンドリューター、ジグソー、電気ドリル等)と小型ボール盤、
エアコン工事で使用していたロウ接工具等で日々悪戦苦闘していた。
しかも、いきなりディスクドラグタイプのフライリールを作ろうというのだから、無謀な限り。
5mmくらいの厚さのアルミ板をジグソーで丸く切ったり(刃を何本折ったか知れない)
ラチェットホイールをケガキで割り出してリューターで歯を削ったり・・。
ヤスリ作業だけで、リールフットを削り出したり・・。
しかし、そんなこんなでとうとう完成(一応フライリールとして使用可)してしまった。

当時の父は、毎度私の馬鹿さ加減に呆れていたので、このリールを見て一言、
「隙間から(スプールとフレームの)向こうが見えるな」と痛いところをいきなり突き、
更に追い打ちをかけるように「お前これ、旋盤使わないで作ったの?」と呆れ顔。
「センバン?ってなに?」「ベーゴマのでかいのじゃない?」





















                            つづく
                                                    
                                                    

ここで初めて、丸い工作物を作るには
旋盤という機械が必要であることを知った

隙間から向うが見える処女作。
ブラスとアルミのコンビネーション

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