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ベーゴマ界隈のそんな熾烈な争いの中にあって、東京下町では時折凄いコマが現れます。
あきらかに他のベーゴマとは異なる風貌で、大きさも
二まわり程の差がある鉄の塊が、一度回り始めると、その回転精度と重さで
他を寄せ付けない、喧嘩にならない程の強さがありました。
当時、通称で「センバン」と呼ばれていたそのコマは、廻すにもかなりの
力量が必要とされ、上級生がよく持っていた記憶があります。
おそらく当時、親や知人に旋盤工がいて作ってもらったものでしょうが、
そんな経緯は知らない他の子供には、その怪物ゴマの名を
「センバン」として、奉り崇めていたようです。

そんな訳で、私も「センバン」といえばそのコマを連想する事が、
大人になってもずっと続いていたわけで、
機械に携わるようになって始めて、
 「ベーゴマは鋳造のコマ」、
 「センバンは、旋盤という機械で作った、鋼削り出しの怪物ゴマ」と
事の次第も含めて理解しました。

しかし、その「センバン」を相手に通常のベーゴマで負かしてしまう
腕達者もいました。ついでにその様子を解説すると、

  ピーコ   「お!センバンじゃん。出せよ、センバン出せよ!オラ!」
  ジュン   「えー・・やだよ〜・・・」
  ピーコ   「サシで勝負だから、だせよ。さきにいれろよ!」
  外野    「そうだよ!やれやれ!」
  ジュン   「よし!」と言ってトコをめがけてセンバンを廻し入れる。
  ピーコ   じっくり狙いを定めてから・・「オリャー!」・・ガチャッ!!
  ピーコ   「やりー・・・!」と、ガッツポーズ!
  外野    「オー!センバンが出た!負けた!」
  ジュン   涙目・・・・。      

今でもこの時の光景は、はっきりと記憶しており、
コマを廻す際、センバンめがけてナタを振り下ろす様に
ぶっつけ廻しをします。
通称「ガッチャ」と呼ばれる荒っぽい廻し方で、
かなり毎日の様にコマを扱っていないと
出来る芸当ではありません。

昭和40年代、下町のとある中学校の昼休みの風景で、
昔を懐かしむような話になりましたが、
ベーゴマ、鉄削り、センバン、魚釣り、リール、旋盤・・・センバン??
辿ってみると、子供の頃から現在まで、趣好の根は
全く変わっていない気がします。